―羅技の歌―

清姫は素早く祭壇の下の戸を開けて入った。すると、同時に祭壇が崩れ落ちた。

「い、嫌~。」

泣き叫んで祭壇に近寄ろうとする紗久弥姫を、仲根は抱きかかえた。

「羅技姫に我等の仇打をさせてはならぬ」

和清が言うと、重使主と仲根は深く頭を下げ、その言葉を胸に刻んだ。

一行は森の隠れ宮を目指して、長いかずら橋を渡って行った。

風神丸と雷神丸は共に行かず、和清のそばを離れようとしなかった。

「お前達……? 主の羅技姫と一緒に行かぬのか?」

二匹の犬は和清に尾を振り、遠吠えをして羅技姫に別れを告げた。姫達が橋を渡りきると同時にかずら橋に火が放たれた。遥か下には大きな川がどうどうと荒波を立てて流れていた。紗久弥姫は燃え落ちるかずら橋を見て気を失い、その懐には幸姫の髪の束を包んだ領巾が大事に入っていた。

そして最後に神殿にも火が付けられた。重使主と中根の両名は涙が流れるのを、歯をぎゅっと食い縛ってこらえた。侍女達は神殿が焼き崩れる様を見ると同時に泣き崩れた。