大学2回生のシート観察

少なくとも、いわゆる進学校においてAさんやBさんのような質の高いシート作成ができる生徒に出会える確率は高い。それと同時に、大学進学が難しいと言われる高校においてDさんのようなシートしか書けない生徒に出くわす確率も高い。

そのため、中堅私学の中心的顧客層たるボリュームゾーンには、スキルもモチベーションも多様な生徒層が存在することが想起される。こうした生徒層が大挙する中堅私学において、学生たちはどんな文章を書くのだろうか。以下では、その一例を紹介しよう。

本学部では2011年度よりコース制を採用しており、2回生秋学期からコース所属を意識した履修を行うことを推奨している。その前段階として、2回生春学期に各コースの特徴などを専任教員が解説するリレー講義「コース導入講義」(以下、導入講義と略記)を開講している。

この講義は2012年度から始まり、私はその初年度からチーフを担当し、そこにおいてもシートを使用している。この用紙はA4、メモは裏面で行うようにしている。これについても翌日を期限に教務課の所定場所に提出させるようにしている。

では、この講義で提出された学生3名のシートを見てみよう。1人目は2015年度に受講したEさんのシートである。このうち左側が講義中盤の6月3日、右側はその翌週の6月10日のシートである。

[図表1]Eさん(大学2回生)のレスポンスシート

このタイミングのものを取り上げた理由は、3日に比べて10日の文章が量・質とも急激に良くなったことと、「今回の講義に関連して知りたいこと」で講義中に気になった用語などを調べて、それをまとめるようになったことである。

厳密に言えば、この箇所では疑問点や考えるきっかけを書くべきであり、実際3日では疑問点を書いている。しかし、その内容は疑問というには射程が広すぎて、ゲストの講義内容をつかんだ上での疑問提示になっていなかった。

それが10日では気になった単語を調べて書くようになった。疑問提示に至らなくても分からないことを放置しなかった姿勢は褒めるべきで、私はこの点を高く評価した。それ以降、Eさんはこれに準じた質の高いシート作成ができるようになった。