生保レディー

お昼を済ませたあと、職場に戻る途中の廊下に立っている生保レディーの存在も現場にはない光景です。「こんにちは、△△生命です!」「××生命です、よろしくお願いします!」こう声を掛けて来るのは美人ばかり。「その手できたか! 生保もなかなか強シタタカじゃねーか、あざといぞ。でもオレは絶対に引っ掛からないからな」そう決意しながら会釈だけして素通りする日々が続くのでした。

この生保レディーたち、素敵な笑顔で自己紹介をしながら、実は行員の首からぶら下がっている社員証を鋭く観察しており名前を憶えているのです。

何日か経つと「〇〇さん、こんにちは。□□生命です!」と名前を呼んで挨拶をしてくるようになります。美人に声を掛けられて、悪い気がする人はいません。

ある日、私は職場の連絡先を教えてしまいました。この時点で私の完敗でしょう。職場に電話がかかるようになり、保険に関心がないか聞かれるようになりました。

この時、私は結婚して長男がいましたが、保険には全く興味がありませんでした。

でも、保険に興味がなくても美人とは話したいです。ダメな人間でしょうか。

男なら普通の感覚だと思います。「大嫌いなシステムから離れ、一時の癒しを求めて素敵な生保レディーと雑談でもしよう。保険の話なんか適当に聞き流せばいいんだし」こんな心境で鼻の下を伸ばしながらアポをとりましたが、大間違いでした。

生保レディーたち、武器を持っています。粗品とかありきたりな物ではなく、ストーリーです。保険を掛けることによって救われた美談を次から次へと聞かされるうち、「保険って大事かも。家族を守るために必要かも」と思うようになっていくのです。

生保レディーの服装がエロっぽく見えたのも影響したかもしれません。個室で二人になると、いろいろと妄想したものでした。

結果、保険掛けました。完敗です。「ずりーぞ、美人を利用するなんて反則だぞ。学資保険まで掛けそうになっちまったじゃねーか」

冷静になった頃、保険料の安いライフネット生命の商品に切り替えたことが唯一の反撃でした。