制服

通った女子高は、制服がセーラー服だった。四つ違いの姉も同じ高校だった。

入学当初、「姉ちゃんの制服を着なさい」と母に言われた。不承不承着たものの、三年間着た制服は袖口の白線が擦り切れ、スカートはテカテカに光っていた。

母に「これは三年間も着られないと思う」と、ごねた。一月ほど遅れたが、私も新しい制服を作ってもらった。

その頃は姉の時代と違って、スカートの襞にアイロンがいらない薬品加工がされていた。みんなきれいな襞のスカートを穿いている。私もあんな制服を着るんだ! 張り切って店に受け取りに行った。

目の前で箱に入れられる制服を見て気がついた。

「あのー、スカートの襞に加工してないみたいだけど」

おずおずと聞いた。

「決まった期間だけは加工しているけど、あとはしないのよ」

店の人はこともなげに言った。泣きたくなったが、一応新しい制服である。気を取り直して、自分でしっかりアイロンをかけようと決心した。家に帰ると、すぐ始めた。きれいにたたんで襞が二重にならないように、気をつけて力を込めてアイロンを押しつけた。何度も何度も。

みんなのように襞の崩れないスカートにしたい。できた!

「よしっ!」と、ウエストを持って眺めてみた。

「あっ、ああっ」

一番真ん中の大事な襞がめくれている。スカートはウエストが細く裾が広がっている。襞の折山は少し斜めにバイヤスになっていて伸びやすい。私は襞を必死に押さえているうちに、バイヤスの布地を引っ張って、伸ばしてしまったのだ。

折山が長くなった分、襞は立ち上がってめくれてしまった。せっかく買ってもらった制服なのに。やっときれいなスカートを穿けると思ったのに。台無しにしてしまった……。泣きわめきたい気分だったが、誰に言うこともできず、スカートを見つめていた。

制服を着る度に、自分のしたミスが切なかった。今なら、「人はドジをしながら生きているのよ。他人は襞なんて見ていないわ」って、笑って言えるのだけれど。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『午後の揺り椅子』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。