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第二章 原点への回帰

第一節 故郷

私は小学校に行くようになると登校拒否を()り返したが、行かされた学校では大人しくしていた。なぜか皆みんなの遊びの輪に入れない子供だったが、試験では何をなさずとも首席を争っていた。そして、知らぬ間に模範生に(まつ)り上げられて、授業は私を中心に(おこな)われるようになっていた。そして、いつしかそれを不思議(ふしぎ)なこととは(おも)わなくなっていた。

転機が(おとず)れたのは十二歳の時のことだった。私は中学の入試の()り、不思議に記憶が覚束(おぼつか)なくなって、(ひど)い成績で入学した。その結果、私は教師たちから冷たくあしらわれ、(ほの)かな疎外感を味わった。のみならず、軍国主義の体育の教師に支配された学

校の体制には馴染(なじ)まなかった。そして、体制に支配された級友たちからもはぐれていった。私は学校の裏庭の桐の葉が、少しずつ()がれ落ちていく(うつ)ろいを、(ひと)(さび)しく(なが)めながらその年を越した。

しかし、そんなふうに孤独になって、ひたすら勉強に打ち()み、次の年には首席に返り()いていた。それによって十三歳の私はさらに孤独になったが、少なくとも、それは(ほこ)らかな孤独には(ちが)いなかった。そして、二番以下に大差をつけて、勉強に余裕ができると、ヘッセやトルストイを読み(ふけ)って、(あま)()けるような希望に胸を(ふく)らませた。秀才の誉れの高かった祖父のあとを追うつもりだった。