望風と武士、優理、大地の四人は同じ中学校の同級生で、高校も四人で同じ高校に進学した。

中二の終わりの春、美術教師の退任式。大地は、望風の様子がおかしいことには、とっくに気づいていた。好きな人がいることも、相手がその教師であることも、望風のしぐさや表情から突き止めていた。

望風が苦しそうに、大地の胸で泣いたことがある。大地の着ていた濃紺の学ランの第二ボタンのあたりをにぎりしめる小さな両手の力強さを、大地は今でも忘れられない。本気で好きなんだなと、こんなに人を好きになれるんだなと心を動かされたのを覚えている。

その美術教師は、イタリアへ移住するとのことだった。大地は、その退任式の時、望風の凛とした顔に女らしさを感じた。寂しいと泣いて甘えたりはしないんだなと、きっとその教師は前向きな旅立ちで、望風は彼の未来を想ったんだなと解釈した。だとしたら、誇らしい。望風のことは、俺たちがそばにいるから大丈夫だと心配しないようにと教師に伝えたかったくらいだ。

中学生になってすぐに、武士がバンドを組みたいと言い出して、誘われた大地は、ただかっこよさそうで、モテそうで……。深く考えずにOKした。

武士はいつも音楽を聴いていて、一緒にいる時間はそれを聴いていた。武士は、多数のジャンルの音楽を聴いていて、好きな音楽だけを常に聴いて楽しむというよりは、音楽を幅広く勉強して、自分の作りたい音楽を探し出す……、というようなスタンスでいたような気がする。

大地は、武士の影響を受けて、音楽を聴くようになった。洋楽、邦楽かかわらずロックバンドの曲を聴くことが多かった。とても影響を受けるような曲には出会わなかった。誰かに憧れて、すごく感銘を受けるようなこともなかった。

でもどんな曲にも、自分自身の感想を持つことができた。曲は人の心を動かすことができるんだと知った。どうしたら自分の曲を作れるか、音で表現するってどうしたらいいのか。

そんなことを考えるようになって、ギターやピアノを弾くようになった。誰かの真似はしたくない。俺は俺。このような考え方が、大地の曲作りの根源となったのかもしれない。悲しみを同調するような曲ではなく、もっと違う何か……。

ここから大地は何かが見えるようになっていく。明らかに自分の視野が広がっていくのが実感できるようになる。その先に、先の先に、先の先の先に、どんな視界が広がるか、どんな景色が見えるか、どんな曲を作れるか、人を幸せにできるか……。

まだ暗いモノクロの視界の中に、ドラマを描けるか模索していた。作りたいのは、LOVEの世界ではない何か……だと、それだけは答えがでていた。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『KANAU―叶う―』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。