新型コロナウイルスと共存しつつ社会と経済を回していくには科学的な知見に基づき合理的に考え自分の行動を決めるという訓練が必要だ

新聞やテレビなどのマスメディアで、ソーシャル・ディスタンシングについて、正確に語られることが少ないのは不思議である。この機会にその根拠について、判明している限り明確に説明したい。

新型コロナウイルスの感染経路に関する科学的知見によれば、5マイクロメートル以上の大きくて重いウイルスは、3フィート(約90cm)以上は飛ばない。従って、感染者の咳やくしゃみで発散する体液の粒子が他人の粘膜に付着する、いわゆる飛沫感染を防ぐには、最低90cm、できれば1m以上の距離を取れば良い。

ところが、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ソーシャル・ディスタンシングを実行する際に他者から取るべき距離を「約6フィートまたは2メートルを保つこと」と定義している。なぜ、科学的知見に基づく飛沫感染防止距離である約3フィートの2倍の距離を求めるのだろう。

実は、新型コロナウイルスのうち、5マイクロメートル以下の小さくて軽い飛沫核は、長時間浮遊し、3フィート以上の距離を移動する。この飛沫核は、密閉された空間に漂った場合、感染者から放出された後でも3時間に亘って感染力を持ち続ける。このため、密閉空間の中にいる他者が飛沫核を吸い込むと、感染してしまうのだ。

この科学的知見に基づき、政府の専門家会議が2020年3月9日に「3つの“密”を避ける」ことを国民へ呼びかけたというのが、事態の推移の経過である。