さらに添付文書を見てみますと、肝機能障害が発生した際の添付文書上の処置の表現の違いが認められます。

「投与を中止し、適切な処置をする」という中止しか選択の余地のない記載と、「投与を中止するなど、適切な処置をする」という言外に減量も意識に置いたような記載があります。

その記載の違いに本当に意味があるかどうかは定かではありませんが、例えばリウマトレックスの重大な副作用を見てみますと、重篤な肝障害(薬物毒性)は「投与を中止するなど」、間質性肺炎(アレルギー性)では「投与を中止する」となっており、同じ薬剤でも処置表現の違いがみられ、案外、表現の違いに意味がありそうです。そこで、表現の違いで分類してみると表2のようになります。

写真を拡大 [表2] 薬物性肝障害の処置記載

これらから言えることは、

(1)アレルギー性の場合は投与を中止する場合がほとんどである(本来、全て中止すべきとされます)。

(2)特異体質の場合はすべて中止。

(3)薬物毒性の場合は中止しない場合もあるようだ。

平成20年の記事でしたが、肝機能障害の機序が分かっている薬物と添付文書を見比べてみた結果から言える結論は、添付文書に「重大な副作用に肝機能障害」が掲載されているとき、

(1)アレルギー型である可能性が非常に高い(頻度が高い)

(2)処置で「中止する」という表現があれば、アレルギー型である場合が多い

となり研修会の講師の話された内容と一致するようです。さらに対応をまとめると以下のようになるでしょう。

(1)重大な副作用で肝機能障害等の記載があれば、まずアレルギー型を疑って対応をする。

(2)アレルギー型の方がより重篤化しやすので、アレルギー型か薬物毒性型か迷うケースはアレルギー型として対応した方が安全である。

まとめ

ここでは、何でも人の言うことを鵜呑みにして良いのかという問題提起でしたが、ついつい人の示したデータを疑ってしまうのが私の悪い癖です。いったん自分なりに納得できる調査をしてみるのもよいかと思います。今回は私が信頼を寄せる先生の講演内容だったので、結果が合っていてほっとした内容になります。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『知って納得! 薬のおはなし』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。