[図表]祖先野生種とそれらの植物から派生した栽培種(Gideon Ladizinskyの「栽培植物の進化」から)

次に、遺伝子組換え作物の開発経緯を簡単に振り返ってみましょう。米国では、20世紀初頭にトラクターが登場し、それまでの馬による中耕(ちゅうこう)除草から機械による中耕除草に変わりました。中耕除草とは、畑の畝間(うねま)に生える雑草を耕して取り除くことで、雑草が発生するたびに何度もやらなければならない作業であることから、経営規模を拡大する上での最大の制限要因になっていました。

裕福な農家はトラクターを購入して、それまで以上に経営規模を拡大させることができましたが、経済的に余裕のない農家は社会の変革に取り残されることになりました。当時は世界的な経済不況の真っ只中にあり、没落した農家の一家がトラクターの巻き上げる土埃の中を流浪していく情景を描いた小説がスタインベック(John Emst Steinbeck:1902〜1968)の「怒りの葡萄」です。

農業生産性を上げるためにトラクターによって農地が過剰に耕耘されるようになり、その結果、土は細く砕かれて風や雨で飛ばされたり流されたりして、徐々に農地から失われるようになりました。これが土壌流亡(Soil erosion)です。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『 雑草害~誰も気づいていない身近な雑草問題~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。