彼の構想は産業革命の非人間性に反発するという現代のポストモダンの思想に近かったと言えないか。中世やバロックの古典化。基本に忠実だったと言えないか。それは立派なドイツ人の長所である。褒めついでに、敢えてル王を弁護するが、例えばワーグナーを引き立てたために、結果的に以後の音楽史の全面的な革命者となったことは忘れてはならない。

ドイツ人の性格にいくらかの懸念も述べたが、五月の日本経済新聞に載った記事には、彼らは「環境保護にかかるコストは地球に住んでいる者にすべてが応分に分担すべき」という立派な意識が定着しているとして、代替フロンの問題を掲載している。ボッシュなど四メーカーが特定フロンも代替フロンも使わずプロパン、ブタン等を使用する冷凍機を開発してオゾン層問題で世界を一歩リードしたとのことである。

大変慶賀すべきことで、これだけでもドイツ人がいかに人類の未来と平和を懸念しているかの証拠であり、今度の私の旅にも喜ばしい価値もあったのである。地球環境問題こそまさにボーダーレスであるべきだからである。その夜、二十時四十五分ミュンヘン発の日航400便で楽しく帰国の途についた。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『21世紀の驚くべき海外旅行II』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。