肝臓の副作用

3剤とも肝炎の記載があります。薬剤性の肝障害は、薬物アレルギー型と薬物中毒型(通過傷害型)に分類されます。重大な副作用に記載のある肝障害はアレルギー型の場合が多く、少なくともすぐに原因の情報が得られない場合はアレルギー性として対応し、中止するのが望ましいとされています。3剤とも肝炎の疑いが出た場合はすぐに中止するように対応するべきでしょう。

脳の副作用

血管に対するアセチルコリンの作用は血管内皮には弛緩作用(血圧低下)、内皮が傷害された血管には収縮(血圧上昇や血管の攣縮⇒狭心症の誘因にもなる)を示すため、血管の状況によっては脳出血を起こす可能性があります。またアセチルコリンによる脳神経の興奮増強が痙攣やてんかんを引き起こす可能性があります。表の結果から次のような構図が見て取れます。

❶ドネペジルとリバスチグミン

脳への作用が強く出ている。

❷ガランタミン

脳への副作用記載がないため、他2剤と比べ穏和なイメージがある。

錐体外路症状の副作用

黒質線条体系のドパミン経路の介在ニューロンの一部では、アセチルコリンが優位になるとドパミンの作用が減弱されパーキンソン病症状(錐体外路症状)を来すことが知られています。脳内でのアセチルコリンの作用が強いほどドパミン作用が減弱して、錐体外路症状が強く出てくる可能性があります。

❶ドネペジル

3剤の中で唯一、錐体外路症状が重大な副作用として挙げられています。それだけ強い間接的な抗ドパミン作用があると言えます。またレビー小体型認知症に使った際の発症頻度が高い(9.5%)との記載がありますが、これはレビー小体型認知症自体がパーキンソン病の拡張型であるためでしょう。もともと錐体外路症状が出やすい認知症にアセチルコリン増強型薬剤を利用するわけですから、発症頻度も当然高くなるのが道理です。またレビー小体型は一般に薬剤感受性が高くなっているので少量から薬剤を使う必要があります。

❷ガランタミン

「その他の副作用」の中で、「パーキンソニズム」と「錐体外路症状」が記載されています。「重大な副作用」の項目に記載されていない以上、その程度は軽めと考えてよさそうです。

❸リバスチグミン

錐体外路症状やパーキンソニズムという記載がありません。唯一類推させるのが「その他の副作用」の頻度が1%未満の「振戦」になります。他の2剤と比べると抗ドパミン作用がかなり弱いと考えてよさそうです。河野医師らのグループによると、ドパミンの抑制作用が強くパーキンソン症状が現れやすい順番はドネペジル>ガランタミン>リバスチグミンとなっており、添付文書から類推した通りとなっています。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『知って納得! 薬のおはなし』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。