残業しろっていう上司、当然周りからの評判もよくなく私は皆の声を代表して正直に評価したかった。しかし、私は自分の意に反して上司を持ち上げるような美辞麗句を並べてしまったのです。

完全に判断を誤りました。今なら思うのです。きっと評価を依頼した人、この辺りの事情を知ってて私を試したのではないかと。

「お前、サラリーマンか。それとも真実を語る勇者か」

銀行に入ってから、私にはサラリーマン体質がこびりついたと思います。銀行が霞が関に弱いことを証明してくれる上司もいました。

「オレは次期頭取候補!」

と豪語するのです。何を根拠にそんな大それたことを言うのか耳を澄ませると、通産省に出向していたというのです。

私なら仮に頭取候補と勘違いしても恥ずかしくて公言することはないのですが、その上司は当時を懐かしそうにこう言うのです。

「いやーっ、出向が決まった時、舞い上がって前後不覚になるまで飲み過ぎた」

出向期間が上司にとって栄華を極めた時期だったのでしょう。

残念ながらその上司は頭取になれませんでしたが、食後の昼寝のいびきがうるさいとか、おやつの時間に自席でアイスを食べるなど、濃いキャラをしていたのは周囲も認めるところでした。

お気に入りのお店を見つけると、業務中でも飲みに行ってしまうことがありました。五時開店で、その時点で常連さんが外で並んでいるような人気店なのですが、去り行く上司を周りは「おいおいー」と思いながらも注意することはなく黙っているのです。

したたかに酔ってから職場に戻ると、

「おめーら、今日何してたんだ! ん? 全然仕事してねーじゃねーか」

誰でもツッコミますよね。

「仕事してねーのはお前だろ!」

って。

親分肌で、私の送別会では四次会まで開催していただき、夜の銀座の世界を教えてくれた方でした。

「周りに参考になる人いる? こういう人になりたいって思える人、周りにいる?」

と聞く上司がいました。

この質問、どうでしょうか。そんな簡単に尊敬できる先輩や上司は見つかるものでしょうか。