特に3つ目に関して言えば、高等教育のユニバーサル段階への移行と少子化が同時に進むと、先細りする顧客の獲得をめぐって苛烈な競争が繰り広げられることは容易に想像がつく。

上で見たように、これまでは大学への新規参入や学部増設といった数的競争を繰り広げてきたが、在籍者数が頭打ちになって以降は教育サービスの中身、すなわち質的競争へ変質し始めている。

そうなると、教育サービスの質が顧客満足度を満たせなければマーケットシェアを失うのは必定であって、そうしたプロセスを経て維持できない大学が淘汰されるのである。

このように、教育業界は公益性の高い部門であるとはいえ、以前から競争は繰り広げられており、そこに政府が介入する必然性はあまり高くない。

ところが、今文科省が推進している大学政策は過剰な競争を大学業界に強要している印象がぬぐえない。

市場外部からの圧力が強いほど抵抗する力も強力に作用すると考えるのは自然であり、それが却って当初の改革の目的が達成できない結果になりはしないか? そのことで大学の体力が無駄に削がれる結果になりはしないか? 逆に、本来淘汰されるべき大学を温存する結果になりはしないか?

これらはいずれも先に述べた政府が経済活動に介入することから生じる歪みであるが、経済学者の立場から文科省の方針と大学業界の現状を眺めるにつけ、こうした懸念が頭から離れない。