私が昇格を望まなくなった二つ目の決定的な理由、見ちゃったのです、上司の源泉徴収票を。

この上司、前出の昇格しなかった理由を教えてくれた上司なのですが、銀行員なのに脇が甘いのです。猛烈に仕事をする方で、海外赴任をしていた際、過労でぶっ倒れたと聞いています。

そこまでして働く上司と、同じ年齢で大して出世していない社員の源泉徴収票を見比べた時、「たったこんだけの給料の違いのためにぶっ倒れるの、マジでアホらしい」心の底からそう思いました。

出世していない社員は結構気楽に仕事をしていました。休暇申請も躊躇う素振りなし。休暇後、「あー、ハワイよかったあ!」とか土産話するのです。

どうでしょうか。欧米なら社長と平社員の給料の差が何十倍とか聞きますが、日本ではそこまで差をつけないこと、実感しました。よくも悪くも差をつけないのが日本の会社だと思います。

何十倍も給料に違いが出て来るなら、必死で昇格を目指すかもしれませんが、そこは世知辛く息苦しい世界。日本の会社は緩い、甘い、優しい。大好きです。「日本人の国民性かぁ」と思うのです。「一億総中流ってこうしてできたのかぁ」実感するのです。

今、この意識が日本人の間でなくなりつつあると聞きます。グローバルスタンダードの普及でしょう。欧米型に上下ハッキリしてきています。そんな社会、望みますかあ?

日本で開催されたラグビーワールドカップで観た試合後に各国の選手たちがお辞儀する姿、感動しました。試合後に観客がお掃除するのも感動しました。「これだよ、これー。日本人の美徳。すげーだろ」自分は掃除しないけど、自慢したくなります。

世界から「日本や日本人ってよくわかんない。クレイジー。でもいいね」って。だから残してほしいのです、日本固有の文化を。「欧米目指すんじゃねーぞ、抵抗しろ! バブルの時は時価総額で世界を席巻してたじゃねーか、自信を取り戻せ!」平社員は思います。この声、頭取に届いてほしいです。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『これでいいのかサラリーマン』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。