恒星間航行宇宙船

(4)恒星間航行宇宙船はいつごろできるか

1.月地下に工場

直径が2000mの居住用リングを作るには、地球で部品を作り、宇宙で組み立てるとなると、地球の重力を脱出するのにエネルギーをたくさん消費してしまう。

また、恒星間航行が往復運航時間を1000年、調査時間を300年から500年で考えると、長期の宇宙滞在に慣れた人々が行かなくてはならない。宇宙で、子供を産み育て、宇宙で一生を終わるような人々でなくてはならないのだ。

地球の環境で生まれ成長した人では長い恒星間航行に順応できないだろう。まずは、今の国際宇宙ステーションの発展的な構造として、人工重力を備えた二重リング状の宇宙ステーションが必要である。このステーションは、地球の軌道に置くのではなく、月の軌道に置く。

目的は、月面や月の地下の資源調査開発のためである。地球からロケットを発射し、月を往復しながら調査するには時間がかかるので、月の軌道に数十人程度居住できるステーションがある方がいい。直径100mぐらいのステーションが必要だろう。

調査が終了した後、月の地下に実験設備や工場設備を作る。工場の目的は、地球の静止軌道上に置くマイクロ波送電用の太陽光パネルの製造である。月の重力が半導体ウエハーの拡散工程に意外な結果をもたらし、高効率発電の太陽光パネルを作り上げる可能性がある。

このパネル衛星を作る際、工場作業員は、月軌道上に人工重力付き二重リングの宇宙ステーションで長期滞在する。宇宙ステーションと月工場とのシャトル便は、作業員の健康が管理できるよう適切な期間を設定する。

交代勤務でパネル製造の作業を行っていく。パネルは、月の地下に蓄えておき、静止衛星が完成する量が出来上がったら、月から運びだす。地球とは違い、月の地下ならば湿度はなく、温度も一定に保たれるので、パネルの長期保存が可能であろう。

月から脱出する燃料は、月にある元素の中から水素と酸素を抽出して利用する。工場のエネルギー源については太陽光を使った発電で賄うことができるだろう。地球の静止軌道上に、巨大な太陽光パネル衛星を数基用意すれば、天候に左右されずに地球の電気エネルギーが用意できる。

これらの静止衛星群が完成するまで、地球は天候で左右される太陽光発電で、しばらく我慢すること。