大学業界への供給~大学数と学部・学科数~

高等教育政策の変遷

ここまでは、過去40数年にわたる四大および短大の動きについて確認した。しかし、この動きは自発的に行われてきた訳ではなく、高等教育の監督官庁である文部科学省(以下、文科省と略記)の政策変更への対応という面を持ち合わせている。そこで、ここでは文科省による大学教育政策の変遷について確認しておこう。

1978~85年度にかけて進学率および在籍者数が微減傾向にあると指摘したが、これは旧文部省の方針により、大学の規模拡大よりも質的充実をはかることに力点がおかれた結果である。ここには当時の18歳人口が150~160万人で安定的に推移する事情もあった。18歳人口がその後205万人(1992年)をピークに増加することに鑑み、1986年度から既存学部の定員増を認めるようになった。これが俗にいう臨時定員増である。

この時期から進学率および在籍者数が増加したのは、この政策転換があった訳である。ただ、臨時定員増はあくまで時限的措置であって、時が過ぎれば解消されるべきものである。だが、旧文部省は18歳人口のピークを越えた1993年度以降においても臨時定員増を解消することはなかった。

安直な定員増を抑制する代わりに、学部設置の地域制限を撤廃することにした。これが18歳人口低下が始まったにもかかわらず、新設大学や学部・学科の設置増が止まらなかった要因である。

こうした高等教育の拡張路線に、やがてブレーキがかかり始める。その発端が2000年度から始まる臨時定員増の半分返上(2004年度に完了予定)である。

だが、その時点で在籍者数に陰りが見えなかったのは、文科省が新学部設置を事実上認めたからである。既存学部において返上しなければならない定員を学部・学科の新設で補う。こうした対応を各大学は実施してきたのである。