雑草の茎葉(Shoot)と根(Root)に含まれるカドミウム濃度の比(S/R比)も全雑草について調べてみました。その結果、表3に示すように、キクニガナをはじめとするキク科雑草は根よりも茎葉に多量のカドミウムを蓄積するのに対して、オオクサキビをはじめとするイネ科雑草は逆に茎葉より根に多量のカドミウムを蓄積することが分かりました。

写真を拡大 [表3] 雑草のカドミウム吸収部位

S/R比とはカドミウムが雑草の茎葉と根のどちらに蓄積されやすいのかを表す指標であり、雑草が重金属回収型と重金属固定型のいずれのファイトレメディエーションに適しているのかを判断する基準になります。すなわち、重金属を茎葉に蓄積する植物では、植物に重金属を吸収させた後に茎葉を刈り取って化学的な処理により重金属を抽出・回収することができます。

一方、重金属を根に蓄積する植物では、たとえ根に重金属を蓄積させることができたとしても、その根を回収するのに莫大なコストがかかることになることから、この場合は重金属を根から回収するよりも、重金属を植物の根域に固定させて外部に漏れないようにすることが有効な方法になります。

このことから茎葉よりも根にカドミウムを蓄積するイネ科雑草はカドミウムを根系に固定して汚染地から外部への漏出を防ぐ固定型のファイトレメディエーションに適していると考えられます。

ここでは研究の一部しか紹介しませんでしたが、重金属の蓄積部位や蓄積量だけでなく、根の形成深度や形成量もファイトレメディエーション植物を選ぶ際の評価ポイントになりますが、まだまだ不明な点が数多く残されており、今後のさらなる研究が待たれるところです。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『 雑草害~誰も気づいていない身近な雑草問題~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。