顔施(がんせ)── 微笑むだけで愛は始まる

「自信満々」というほどではないにしても、私はそれでも普通の人よりはかなり自信家の方だったと思う。人生それなりの自信をもって生きてきたつもりだった。少なくとも、二〇一一年に東日本大震災が起こるまでは。

あの大震災はそんな私のささやかな自信など粉々に打ち砕いてしまった。

あのときは、大自然の脅威の前に人間の力などなにほどのものでもない、というような思いを誰もが感じずにはいられなかった。私自身ももちろんそう感じて、心底大自然の力の前に謙虚にうなだれた。

だが、私がそれまでの「自信」を失ったのはそのためではなかった。あのとき、私は初めて何もできない自分を知ったのである。

震災直後からたくさんの人々や国々が支援に動いた。たくさんの個人も現地に入り、炊き出しをし、荷物を運び、物流のための道路を切り開き、泥を掻き出し、失意の人々に寄り添い、慰めていた。

天皇、皇后は避難所を訪れ、膝をついて被災者たちの声に耳を傾け、励ましておられた。芸能人たちの炊き出し、解散していたグループを急きょ再結成して、チャリティーコンサートを開き、その収益を被災地支援に充てるグループ、避難所に駆けつけ、笑いを忘れている人々に笑いを届けようとする芸人たち。週末ごとにバスを連ねてボランティア活動へ出かけるサラリーマンや学生たち。

みんな、自分のできることを一生懸命に働いていた。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『母の説法 人生で大切なこと』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。