KANAU―叶う―

(かな)()に寄っていきたいな」

望風がねだると、

「遅刻だな」

武士は、そう言って奏多へ向かってくれる。望風のママがつくってくれたサンドイッチをおいしそうに味わいながら。本当に大人で優しい人。男らしさとかに拘っていない。素で男らしい。素直。いつも。

奏多には、よく四人で立ち寄る。人気の少ない海岸だ。優理、武士、大地。元々この男の子三人でバンドを組んでいたところに、武士が望風を誘った。放課後は、よく奏多に四人で何をするという事でもなく、ぶらりと立ち寄った。

望風にとってこの三人は、同級生で、親友で、バンド仲間で……、でもそれだけじゃない。きっと四人それぞれが、それぞれに想いがあって、好意的で、特別で、その想いを四人で共有してるかのような。なんとなく目には見えないけど、四人の中にできた輪のようなものに、優しさが加わってつながっているような。

友達ではない、でも恋人でもない。友達以上恋人未満という立ち位置が存在するならば、まさにそう言えるかもしれないが、そう言いきってしまいたくない。誰にも知られたくないような誰にも解ってほしくなんかないような。そんな唯一無二の関係だった。

特に武士と望風は、お互いの気持ちを、言葉だけでなく体を触れ合せて表現し合える、どんなことも許しあえる、語らずとも分かり合えるような関係で、運命があるならば、同じ道を歩いているのではないかと思わせるくらい、いつも二人の予測は似ていた。