約束の場所

合宿から帰った翌日、用具の片づけついでに学校に集合し、合宿を頑張ったご褒美に、と、家庭科の調理室を借りて部内カレーパーティーを催した。

佑子は年配の家庭科の先生に可愛がられていて、その微笑みに甘えることにした。その調理人を買って出たのが基だったのだ。

巨大な鍋二つに作ったカレーと大量のご飯。それがぺろりとなくなった。黙々と、あるいは佐伯くんや石宮くんなどはせわしなくしゃべりながら、部員たちは楽しげに昼下がりの中庭で宴を楽しんでいたのだったが、その中に一人見慣れない生徒がいて、しかも彼は人一倍大盛りのご飯を頼もしいスピードで飲み下していた。顔立ちも体型も、丸っこい。

「いい食いっぷりだなぁ。でもきみ、合宿にいなかったよな」

基がそう声をかけると、口いっぱいにカレーを頬張った彼は目を白黒させた。代りに口を開いたのが保谷くんだった。

円城寺(えんじょうじ)っていいます。えびちゃんばっかりスカウト頑張ってるから、オレも、って」

「ラグビー、一緒にやる?」

佑子が問いかけると、善良そうな細い目をさらに細めた。

「デカいのと、大食いしか能がないんですけど。円城寺照也(てるや)っていいます」

満面の笑みで、足立くんが握手を求めた。

「間違ってもテリーなんてかっこいい呼び方はするなよ。えんちゃんで十分だ」

保谷くんが高らかに彼を紹介すると、部員全員から拍手がわいた。佑子は、基の指揮下で片づけを始める一年生部員たちの後ろ姿を見ながら、中庭のベンチで二人のマネージャーさんと向かい合っていた。

いつも女子にお世話になってるだけじゃダメだ、と、基は一年生たちに叱咤の声を飛ばす。どうせ大雑把な片づけなんだろうから、後からのチェックも大変そうではあるけど。