この副作用は薬が持つ本来の薬理作用が過剰になったために出るタイプなので、副作用としての頻度は高いといえます。主症状の改善に影響がない範囲で投与量を減量したり、より温和な同じ効果のある薬への変更という手段がとられ、必ずしも薬を中止しなくてもよいタイプの副作用ともいえます。この副作用はさらに3つに小分類化されます。

1.本来の薬理作用の過剰型

例を挙げると、高血圧の薬で血管を拡張して血圧を下げるタイプの薬があります。血圧が下がり過ぎると低血圧となりふらつき、めまいが起こったりします。下がり過ぎた血圧を元に戻そうと体が反応して心臓の動きが活発になり動悸を起こします。また血管が拡張するため顔面の血管が拡張して顔面が赤くなったり、腎臓の血管が拡張して尿が作られやすくなり頻尿になったりします。これらが本来の薬理作用の過剰型と呼ばれる副作用になります。

2.薬の持つ別の薬理作用の過剰型

例を挙げると、炎症を抑える糖質コルチコイド(いわゆるステロイド)があります。目的とする薬理作用は炎症を抑える作用なのですが、血糖値を上げるという別の作用も持っています。糖尿病の人がステロイド薬を長期に服用すると、血糖値がさらに上昇しやすくなってしまいます。これが別の薬理作用の過剰型と呼ばれる副作用になります。

3.薬をやめるときに出てくる退薬症候群型

このタイプは薬が過剰になる前項までの考え方とは真逆なのですが、薬理作用型の仲間に加えられました。例を挙げると、うつ病に利用されていた薬を急にやめると不穏や焦燥感が強く出たり動悸が強くなったりします。また短時間作用型の睡眠導入薬を急にやめると、かえって不眠が強く出たりします。

これまで薬で抑えられていた元の症状が、急に薬から解放されることで強く出てくるような薬も中にはあるわけです。このような薬を中止する場合は徐々に薬の量を減らしていく必要があるので、患者さんには急にやめたりしないでくださいね、と薬剤師は指導します。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『知って納得! 薬のおはなし』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。