この2種類の指標は、単なる逆数なのでまったく同じことを言っているのですが、その印象はかなり違いませんか。

つまり、省エネ法のエネルギー消費原単位の場合は、企業としての最も重要なことである売上・利益・付加価値を増大させることと、この指標自体の向上とが完全に一致していないのです。単に感覚的な話だけかもしれませんが、筆者には極めて重要なことではないかと感じられます。

社長や経営陣の最大の命題は、自社の事業の売上・利益・付加価値を向上させ、事業を中長期的に成長させることです。

その意味では、エネルギー生産性を定点観測し、それを経営指標とすることで、自らの評価・成績に直接つながるイメージが湧くのではないか。エネルギー消費原単位を半分にすることとエネルギー生産性を2倍にすることとは、実質的には同じことなのですが、どちらが経営者向きか。エネルギー生産性指標を自社の脱炭素化の管理指標に加えることで、社長をはじめ経営陣の意識が変わるのではないか、と期待が膨らみます。

さらにこうした情緒的、イメージ的な話だけではなく、社長や経営陣にとって自社の労働生産性を改善するというのは、当然のこと大きな経営課題の一つでしょうから、エネルギー生産性の向上も労働生産性の改善・向上の一助になり得ることから、よりEP指標の重要性も高まっていくことでしょう。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『データドリブン脱炭素経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。