二階にエレベーターで上がると、大きな黄緑色のソファが並ぶ。間隔を開けて座るタイプの待合室だ。エントランスの窓からは、中庭の木々の緑がまぶしく映った。巨大なモニターでは病院の紹介や製薬会社の広告が繰り返されていた。

自分の番が来たら表示されるので 、待たされている患者は一人、また一人とそれぞれの診療科へ消えていく。ぼんやりと見ていると自分の番が回ってきた。

三番と書かれた緑の黄緑のドアを開けて入ると、中は白い冷たい感じの小さな診察室で、四十歳代の女医が看護師を伴い大きな机に座りパソコンを見ていた。

「お待たせしました、古谷さん。二年ほど来られませんでしたが。調子はどうですか?」

「あまり良くないので今回受診しました。頭痛や不眠、悪夢で困っています」

「そのような症状はいつから?」

パソコンを猛烈な速さで打ちながら、こちらを向いて質問をしてくる。

「ここ、一か月くらいでしょうか。感じの悪い夢を見ては目が覚めるということの繰り返しで。最近は頭がキリで刺されるように痛んで」

「ではとりあえず、検査をしましょう。その結果を見て診断しましょう」

※本記事は、2020年7月刊行の書籍『双頭の鷲は啼いたか』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。