しかし、その一方で重金属は場合によっては人の健康に重大な被害をもたらすこともあります。

カドミウムを過剰に摂取すると、腎臓機能が低下してカルシウムとリン欠乏が起こり、骨軟化症や骨多孔症に罹ってしまいます。これが1968年に初めて公害病に認定された「イタイイタイ病」です。

2003年に施行された土壌汚染対策法は土壌中の有害物質によって引き起こされる人の健康被害を防止する目的で制定された法律であり、その中でカドミウムの地下水中の基準値が0.01ピーピーエム(100万分の1)以下と定められています。令和三年四月より0.003ピーピーエムと一層厳しくなりました。

基準値を超えるカドミウムが鉱山跡地やメッキ工場跡地の他にも下水処理場で検出されることもあります。これは自然界において土壌中にごく微量に存在するカドミウムが作物の根から吸収され、人がその作物を摂取して最終的に糞尿と一緒に排出されるからです。

また、土壌だけでなく食品に含まれる有害成分についても国際的な取り決めがあります。コーデックス委員会が2011年に取りまとめた指針に従い、玄米中の許容カドミウム濃度は平成二二年度からそれまでの1.0ピーピーエムから0.4ピーピーエムに引き下げられました。

カドミウム汚染地を水源とする河川水を灌漑水として利用している水稲栽培においても深刻な問題となっており、カドミウムを含む農用地土壌汚染対策指定地域は全国で約7600ヘクタールにおよび、この内、平成30年度時点で93.7パーセントの約7100ヘクタールで対策事業は終了していますが、約500ヘクタールの水田が未だに対策指定地として残されています。

これまで非汚染土壌を客土する方法や汚染物質を化学的に除去する方法が重金属汚染土壌の修復に用いられていましたが、近年、ファイトレメディエーション(phytoremediation)と呼ばれる植物を活用した修復技術が注目されるようになりました。

重金属は分解できないことから、ファイトレメディエーションでは、土壌中の重金属を植物の根に吸わせるか、あるいは植物の根圏に固定させるかのいずれかになります。一方、重金属汚染地では、単に過剰の重金属が蓄積しているだけではありません。土壌の排水性が悪かったり土壌が貧栄養であったり、場合によって日当たりの悪い所もあります。

このことから表に示すように、ファイトレメディエーション植物には重金属に耐性を示すことはもちろんのこと、汚染地の気象条件や土壌条件下でも旺盛に生育することが求められます。

[図表]雑草を用いたファイトレメディエーションの長所と短所

また、病害虫に強いことや在来植物であることも維持管理や地域生態系を保全する観点から求められます。これらの要求を満たす植物がどこに生育しているかといえば、それは汚染地あるいは汚染地周辺ということになります。したがって汚染地の雑草植生を詳しく調べることにより、ファイトレメディエーションの候補植物を容易に見つけ出すことは可能です。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『 雑草害~誰も気づいていない身近な雑草問題~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。