1998年3月14・15日(土・日)パリ再訪紀行

-オルセー美術館と、フォンテーヌブロー宮殿-

昨年7月のロンドン着任以来、9月(市内観光およびヴェルサイユ宮殿観光)・10月(市内観光およびロワール川お城巡り)に続いて3度目のパリ訪問になり、先週パリ出張のついでにリヨンに行きましたのでそれを入れると4度目になります。

今回は今まで見切れていない美術館・博物館の見学と、ブルターニュ半島の海岸に聳え立つ修道院モン・サン・ミシェルをと思っていたのですが、パリからのモン・サン・ミシェル観光ツアーは土曜日朝7時半から夜9時まで掛かり週末観光では日程が合いません(そのうち、ロンドンから直接ノルマンディー・ブルターニュ地方を観光しようと思います)。

その代わり、先週のリヨン観光で訪れた織物歴史博物館に展示されていたフォンテーヌブロー宮殿内装用の絹織物に感銘を受け、日曜日のフォンテーヌブロー宮殿半日観光に参加することにしました。

今回の旅行のテーマは印象派とナポレオン1世(在位1804年~1814年、1815年)の組み合わせというところでしょうか。

 

土曜日は6時19分ロンドン発のユーロスターですが、随分日が長くなり6時すぎには夜が明けます。

イングランド東南部ケント地方はイギリスでも最も人口稠密な地方ですが、ロンドンから30分も走ると(ロンドン近郊は時速260キロではなく、鈍行列車と同じスピードしか出せません。これについては英仏の体制・文化の違いを反映した面白い話があるのですが、また機会を改めてご紹介します)

農場・森林地帯になります。ヨーロッパのどこを旅行していても感じることは郊外・田舎の美しさで、見苦しい看板もなく家並みも周囲の景観にマッチしています。

驚かれるかもしれませんが、イギリスの農業はEUの中で最も競争力が高く(EU第一の農業国フランスより高い)、多くの農場は農業生産会社による大規模・機械化農業です。

私は農家の倅に生まれましたので日本の戦後農業政策の実態には普通の人より通じているつもりですが、イギリスより気候に恵まれた日本の農業政策が失敗した理由は、過剰な保護政策で市場原理を導入しなかったことと思います。

もちろんイギリス農業も農薬・化学肥料の過剰使用等の問題を批判されていますが、それに対してはマクロの調整政策で対処するべきで、過剰な介入は長い目で見ると産業自体を損なうことになります。

パリ到着は10時半、ホテルで休息後、ルーブル美術館と並ぶパリの代表的な美術館、印象派絵画・彫刻の殿堂オルセー美術館に行き夕方6時の閉館までじっくりと鑑賞することができました。

画家・作品につ。1つ印象に残ったのはミレーの「晩鐘」で、信仰篤い農村の若夫婦(と思います)の祈りが伝わってくるようでした。画家・作品から離れて、1つ感じたのは美術館の建物の素晴らしさです。

旧鉄道駅舎(それ自体歴史的建造物)を改築したのですが、展示されている作品をゆったりとした環境で訪問者に展示するための空間処理・内部装飾は見事です。

2年前のニューヨーク支店出張時にメトロポリタン・ミュージアムを訪問したのですが、壁面一杯に名作がところ狭しと並べられていて圧倒された記憶があります。ルーブル美術館も同様ですが、パリの博物館・美術館は建物自体の素晴らしさと、適切な展示量・内容でニューヨークより一枚上ではないでしょうか(大手総合商社ニューヨーク駐在員のCさん、コメント乞う)。