出産経過

出産の経過は、インタビュー内容を私が判断したところ、50件が正常で5件に異常が起こっていました。異常があったのは、第2章で紹介したA・Hさんの第1子と第3子の2回(胎盤遺残)、C・Aさんの第3子(出血多量)、C・Dさんの第2子(逆子・新生児仮死)、そして紹介はしていませんがA・Eさんの第3子(早期産)でした(表)。

異常が起こった出産の妊婦健診の受診状況は、A・Hさんは第1子第3子ともに不定期に受診しており、C・Aさんは1回のみ、C・Dさんは定期的に、そしてA・Eさんは不定期に受診していました。なお、未受診の9件はすべて正常出産でした。これらのことから、出産時の異常の発生に、受診の頻度が関係しているとは考えられませんでした。

出産時に異常が起こった4名の経過を紹介します。

まず、A・Hさんは第1子と第2子の際、不定期に受診し病院にはプライベート出産の意向を伝えないで出産に臨んでいました。第1子の出産は子どもが生まれて11時間経っても胎盤が出ず、役場に相談しました。保健師から病院受診を勧められたものの拒んだため、助産師の資格も持つ保健師が自宅を訪問し、胎盤を娩出させました。

第2子のプライベート出産は、特に問題なく終えました。そして、その後第3子を妊娠したA・Hさんは、健診時に医師から産み場所を問われました。正直にプライベート出産の意向を伝えたところ、「出産の危険性や合併症について、また、緊急時の受診は可能であるが、状態によっては手遅れになったり、対応できない場合は他院に搬送されることも考えられる」旨、文書と口頭で説明を受けた上で、「自宅出産は自身の都合によるもので、一切の責任は本人と家族が負い病院には迷惑をかけない」という文面の誓約書を提示されました。

A・Hさんは、緊急時への対応を考えてくださった上での提案だと好意的に受け取り、誓約書にサインをしました。そして、第3子の出産では第1子の出産時同様に胎盤が出ず、文書に沿って病院に受診を依頼し、処置を受けることができました。

44歳の高齢で第3子を妊娠したC・Aさんは、助産所の出産を希望するものの通える範囲に助産所はなく、病院出産をしたくなかったのでプライベート出産しか選択肢がないと考えました。

そして高齢出産となる自分の体がプライベート出産に臨める状態か診てもらおうと、妊娠初期に病院を受診しました。ところが、問診票に正直に(右記の)診察の意図を記載したため、診察を拒否され受付で帰されたと言います。

プライベート出産を考えていることが原因で受診拒否に遭ったのです。その後、他県の診療所で診察を受け、「問題ない」と言われプライベート出産を行うことにしました。その後は受診していませんでした。そうしたところ、出産時は出血多量(出血量は不明)となったのです。

逆子をわかった上で第2子をプライベート出産したC・Dさんは、定期的に受診していました。出産は、「(子どもの)身体が出てから頭が出るまでに時間がかかり、生まれてすぐには泣かなかった」と言います。仮死状態だったと考えられます。

4人の子どもをすべてプライベート出産したA・Eさんは第3子が早期産でした。A・Eさんは、第1子の初診の際、C・Aさん同様に、病院でプライベート出産の意向を伝えたところ診察を拒否され、妊娠を診断してもらうために他県の病院を1回受診していました。

医療に不信感を持ったため第2子は未受診で出産し、その後転居し第3子を妊娠しました。この第3子の妊娠は、地域の保健師に未受診であることが把握され、保健師から受診を促されました。

通える範囲に自然出産に理解のある医師がいる病院があると聞き、受診してプライベート出産の意向を伝えたところ、「良いんじゃない。何かあったらうちで診ます」と異常時の対応を引き受けてもらえることになり、不定期ながら通いました。ただ、A・Eさんは腹部の緊満を指摘され安静にするよう指示されていましたが実行できず、9か月の早期産となりました。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『私のお産 いのちのままに産む・生まれる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。