「監督。あなたが私たちに最終的になさりたいことが判りだしました。いいでしょう。日本人がこのインドで何をすればいいのか。それをしっかりと私も把握してみたいと思います。彼と会いましょう」

笹野はこう告げて婆須槃頭の登場に身構えた。この応接室はまるで計算されつくされた映画のセットみたいだなと笹野は思った。

一行が注視していたドアはいつまでたっても開かれなかった。

おもむろに蓮台が立ち上がって照明ボタンのすぐ真下にあるスイッチを押した。驚いたことに一行のすぐ真後ろの壁が静かに後退し始め床が徐々にせりあがり、ステージらしきものが出来上がっていった。

「こりゃ、映画のワンシーンじゃないか」内山がつぶやいた。

ステージは出来上がり、鳴りを潜めた。

しかし、ステージに上がるべき人物はなかなか登場しない。

一行がステージに気を取られているうち、蓮台は三人の男を室内に招き入れた。先の記者会見で登場したマルトの影武者のあの俳優たちである。マルトの扮装のままである。一人が声を上げた。

「我等が総帥(そうすい)はじきに姿を現します。皆さんは彼の普段の姿をご覧になることでしょう」

その声に我に返った一行は、三人の男たちを代わる代わる目配りしながら(あるじ)ともいうべき人物の到着を待った。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『マルト神群』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。