気が付けば季節は春爛漫。新型コロナウイルス感染を予防しつつしたたかに毎日をデザインしよう

2020年4月7日に安倍前首相が緊急事態宣言を発令してから、既に1年以上が経つ。この間、外出制限が多大な不便をもたらし、これを守らない嘆かわしい人々が多いという報道が目につくが、本当にそれだけだろうか。

テレワークを取り上げて見ても、通勤が不要になった結果家族と過ごす時間は確実に増えている。普段見えなかった家族の素顔を再発見し、より深い絆で結び付く良い契機になるのではないか。

目を外に転じてみよう。4月半ばという季節はまさに春爛漫だ。明るい時間が着実に延びていき、気温も少しずつ上がっていく。散歩や食事をしながら屋外で過ごすのも気持ち良いし、窓を開けて家に風を通しても心地良い。

これが真冬だったらどうだろう。日が落ちるのが早いので子供達はゆっくり外で遊べない。換気をしようとしても寒風吹きすさぶ真冬では躊躇われてしまうだろう。

環境の変化に文句を言うだけの人は、心が老化している。新しい現実に合わせて自分の世界観を逐次更新していくのが自立した大人である。こういう人は、年齢に関わらずいつまでも若い。環境の変化は保守的な人にはピンチであるが、進歩的な人にはチャンスである。

例えば、半ば神話化しつつある「仕事では対面での(face-to-faceの)コミュニケーションが大切」という主張も、このご時世ではそうも言っていられなくなるだろう。

政府はこれまで、首都機能移転など様々な手法で東京への中枢機能の一極集中を是正しようとしてきたが、今のところ上手く行っていない。それが奇しくも新型コロナウイルスの感染拡大のお蔭で実現しようとしている。何とも皮肉な話だ。遂に千代田・中央・港の都心3区から中枢機能流出が進むのである。

一方家庭でも、ZOOMなどの「Web会議支援アプリ」を使ったリモート宴会が流行っている。この機会に乗じて事業拡大を狙うWeb会議関連業界は、さぞ鼻息が荒いことだろう。また、ウーバー・イーツのような新しい配達方法を実践する業界も伸びるのではないか。働く人の労働者としての権利を守りつつ、消費行動の選択肢を増やし人々の生活の質(QOL)を上げる試みとして、応援していきたい。

皆さん、「明けない夜はない……」という情緒的な言葉に気持ちの落ち着け所を見つけたりしないでください。この言葉が意味を持つのは、状況を変える力が確実に働いている時だけです。太陽の運行が止まることはないので必ず夜は明けます。失恋などの辛い記憶も、忘却という人間に備わったありがたい力が作用して、時間の経過と共に薄れていきます。

しかし、こと新型コロナウイルスについては、全く話が違います。放っておいても感染拡大を防ぐ力はどこにも作用していません。人々が努力して感染しないように日々を過ごすしかないのです。この戦いは、短い期間だけ我慢すれば間もなく解放されるのではありません。長い期間を掛けて徐々に人々の間に抗体を作りウイルスを無力化するということなのです。

家で過ごすことを「どこにも行けなくて退屈でストレスが溜まる!」と否定的に捉えるのは適切ではありません。そうではなく「自由な時間が増えたので普段できない過ごし方ができる!」と肯定的な姿勢で日々をデザインしようではありませんか。