②β遮断薬の特徴

①で示したβ受容体刺激作用を遮断するので、以下のような特徴が出てくることが考えられます。

1.ISAのあるβ遮断薬

ISAとは内因性交感神経刺激作用で、部分刺激作用とも呼ばれ100%遮断するのではなく、刺激する作用が少し残っている作用が穏やかな薬になりますから、以下のことがいえます。

(1)心収縮力や心拍出量を減少させ過ぎないため、体の弱った高齢者に優しい。一方、ISAのない遮断作用の強いβ遮断薬は狭心症や頻脈の患者に適し、心筋梗塞の再発防止や心不全の予後改善効果が期待できる。

(2)心拍数を減少し過ぎないため徐脈傾向の患者に適する。

(3)気管支収縮作用がやや弱くなる。

(4)脂質代謝への影響が少ない。

(5)長期投与での中止時に退薬現象※)が弱い。

※)退薬現象:長期にわたるβ受容体遮断作用によって逆にβ受容体の感受性が高まるため、β遮断薬の急な中断によりβ受容体刺激作用が強く出てしまう現象。

2.β1非選択性のβ遮断薬

非選択性ですからβ2受容体刺激の逆反応(遮断作用)が起こる可能性があるので、表1から見ると「喘息発作誘発・悪化、末梢循環不全、糖質や脂質の代謝異常」をきたす可能性があります。どうもβ1選択性β遮断薬を上回る有用性はなさそうに見えます。

あえて有用性を先ほどの表から探してみると、「振戦傾向のある人や低K血症傾向のある人」にとっては有用かもしれません(確たる根拠があるわけではありませんが、β受容体非選択性でα遮断作用もあるアロチノロールには本態性振戦の適応があります)。

そのような中でも非選択性のプロプラノロール(インデラルⓇ)は、「片頭痛予防」の適応症が新たに付くなど頑張っているところです。

③α1遮断作用のあるβ遮断薬

α1受容体への主な刺激作用は末梢血管(血管収縮→血圧上昇)、腎臓(レニン分泌減少。ただしβ2刺激によるレニン分泌増加が上回る)、肝臓(β2受容体と共に糖新生亢進、グリコーゲン分解亢進→血糖上昇)、尿道括約筋(収縮→尿閉)となっています。これらの中でαβ遮断薬として有用なのは「末梢血管拡張作用による降圧作用、臓器血流の維持や改善効果」になります。

④まとめ

体の中にある神経伝達物質の相手方の受容体にはいくつかの種類があり、どの受容体に結合するかによって体の反応が違ってくるという一つの例になります。よく選択的にある受容体に作用する薬がありますが、似たような受容体にもある程度作用をする場合があり、相対的な選択性と考えておいた方がよいでしょう。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『知って納得! 薬のおはなし』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。