昨今のIoT(あらゆるものがインターネットにつながること)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の議論の中で、エネルギー関連データのデジタル化の話題が抜け落ちていることが散見されますが、筆者としてはIT関連技術者とエネルギー関連技術者間に今まではあまり接点がなかったことが原因ではないかと推察しております。

IT専門家にとってエネルギー分野は、専門外でありよく分からない、一方、エネルギー技術者にとってIT分野は専門的で難しいという技術者間の目に見えない縦割り構造が存在しているようにも感じております。

確かに、両方の技術に明るい技術者は、少なくともわが国にはほとんどいないと言っても過言ではないでしょう。したがって、黙って現場に任せておいたのでは、なかなかエネルギー部門のデジタル化が進まず、より詳細なデータ類を簡易に活用できるような環境を作ることができず、結果として効率的で効果的な省エネルギー・エネルギー効率化、ひいては脱炭素化が進まないということになるのです。

だからこそ、この現場レベルでの見えない溝の存在を感得し、その技術的な融合・統合を促すような的確な指示と意思決定をしていくことが脱炭素経営を標榜する企業経営者には、また近い将来の経営者になろうとしている方々には必須の要件になってくるのです。

いずれにしても、脱炭素社会の実現に向けて、省エネルギー・エネルギー効率化の思想・発想に基づいた技術と具体的な投資と行動は必須であるというのが、筆者の強く主張したいところです。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『データドリブン脱炭素経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。