メンバーを出勤した体で家に帰すことが責務

ある日のこと。作業終了後に私が組合の説明をして、最後に意見を聞いたときでした。ある先輩が「うちの会社は帰りが遅い、公務員は時間になるとすぐに帰れる」と嫌みを言いました。私は公務員になりたいなら早く辞めて公務員試験を受ければいいと言いたかったのですが、それでは売り言葉に買い言葉で前に進みません。

それで、遠回しに「それはその通りと思います。公務員は一人ひとりの仕事なのでいつでも早く帰れます。しかしここは会社なのでメンバー全員の安全を確かめないと帰るわけにはいきません。誰かが遅く事務所へ上がってくれば何があったのか心配ですし、問題なければ早く仕事が終わるように改善したりして助け合わなくてはいけません。会社は個人プレーでなくチームプレーです。皆さんもこの会社で働いて生活が成り立っていると思いますので、チームプレーでお願いします。もし私の頭が良かったら当然公務員を受けています」と言いました。

すると、その先輩は苦笑いし何も言いませんでした。やはり、会社はこうあるべきという信念を持ってハッキリと答えて対処すればいつかわかってくれる。本音で説明すれば理解してくれるし、文句も出ないと確信しました。

常日頃から「自分の班が効率良く仕事ができても、工程で作業する人や班に迷惑をかけないようにすることが大事です。そうなりそうなときはすぐに連絡してください」と口酸っぱく言ってきました。これは自分の班のメンバーが後ろ指をさされるのは嫌だからです。自分の班の成績がいくら良くても、他の班に迷惑がかかっていては何の意味もありません。全体を見るべきです。

ところが、ある日、材料を運搬するメンバーが一人だけ帰りの点呼の時間に事務所に上がってきませんでした。怪我をしたり、何か問題が起きたのではないかと心配し、私は全員を待たせて現場を探しに行くと、まだ材料の入った台車を運搬していました。

なんで仕事をしている?と聞くと、本人は「いや、今日は前工程の生産予定が多く台車を運びきれませんでした。後の班に迷惑をかけるので、あと3台運んだら上がります」という返答でした。

そういうときは他の人にも応援させるので連絡してほしいと言うと、「すみません、もう少しで終わるので連絡しませんでした」と正直に答えてくれました。気持ちはわかります。他の人に迷惑をかけるという気持ちが強かったのだと思います。この件はそれ以上は何も言いませんでした。

帰りは、残業者以外は全員そろって連絡事項を説明し家に帰します。一人でも足りないと心配です。怪我をしたり何かトラブルに遭っていないか心配です。監督者はメンバーを出勤した体で家に帰すことが重要な責務です。