また、姿形や種子の形成時期が作物に似ているために、防除しきれず作物に紛れて生育している随伴雑草(companion weed)と呼ばれる雑草もあります。

その代表例がエンバク(作物)に対するカラスムギ(雑草)であり、イネ(作物)に対するタイヌビエ(雑草)です。さらに、アワ(作物)とその近縁種のエノコログサ(雑草)が交雑してできたオオエノコログサのような雑草もあります。

作物の多くは雑草を改良したものであり、作物と随伴雑草は遺伝的に近縁であることから、両者の間で遺伝子流動が起こりやすく、このことが後ほど述べる遺伝子組換え作物が破綻した原因と考えられています。

この他にも、雑草の起源に関するものとして、Dump heap theory(ゴミ捨て山説)と呼ばれる説があります。人の生活様式が狩猟採集生活から農耕生活に移行するにつれて定住化が始まり、その結果、食物の廃棄物や糞尿が住居の近くに集められるようになってゴミ捨て山、すなわち肥沃な場所ができて、そこから好窒素植物の雑草が生まれたという説です。

一般に、肥料は植物の成長に必要不可欠であり、肥料が多いほど植物は良く育つと思われがちですが、肥料が植物の成長にプラスに作用するか否かは肥料の施用量によって決まります。作物や山野草の多くは肥料(窒素)をやり過ぎると徒長して枯死しますが、農耕地雑草は多量の肥料を与えても枯死せず、むしろ与えれば与えるほど旺盛に成長します。

土壌撹乱に適応性を示すことに加えて、窒素を好むことも農耕地雑草になるための必須の条件といえます。

最後に先駆種(colonizer)です。メソポタミア文明や黄河文明は広大な沃野が広がっている大河川の河口域に発達しましたが、ヒマラヤ山脈やカラコルム山脈などの氷河末端でも農業は盛んに行われています。それはミネラルを豊富に含む氷河の融水が潤沢に供給されているからです。

氷河の外縁部には、土壌撹乱に適応した野生種(先駆種)が農業の開始前から既に定着しており、その野生種が近くの農地に次第に侵入して雑草化したというものです。ヨモギ、ナデシコ、スイバ、ハチジョウナ、ヤエムグラ、アカザなどが先駆種の代表的な雑草と考えられています。雑草の起源は決して一つではありません。

上述したいずれの説も農耕地雑草を対象としたものであり、道路雑草や芝地雑草の起源についてはこれはといった定説はありません。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『 雑草害~誰も気づいていない身近な雑草問題~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。