新型コロナウイルスの感染拡大による社会崩壊を防ぐには指導者が問題の本質を正しく伝えることが前提になる

新型コロナウイルスの感染拡大による、社会崩壊を防ぐために、国家の指導者が発すべきメッセージは、例えば次のような内容になるだろう。

「2019年の11月に中国で発生し、今や全世界的に感染が拡大している新型コロナウイルスは、実に厄介な代物です。約10年前に流行したSARSとは違い、感染してもすぐには自覚症状が現われません。ですから、感染者が自分が感染源であることを知らずに、非感染者と接触してしまいます。濃厚に接触すると、その強い感染力であっという間にウイルスを移してしまうのです。

一旦感染すると、高齢者や既往症のある方々は重篤化しやすく、重篤化すると容体は急速に悪化し、呼吸器系の機能不全をもたらし、死に至ります。恐ろしい病気です。

普通、病気には治療薬があります。インフルエンザ患者に投与されるタミフルやリレンザのような薬です。これらは抗ウイルス薬と呼ばれ、患者がウイルスに対する抗体を作るのを助ける働きをします。しかし、この種の治療薬を開発するには、新型コロナウイルスを培養して、その感染力を削ぐ可能性のある薬を試して、その効果を検証する必要があります。

残念ながら、この過程は時間がかかります。新型コロナウイルスを増殖させて、ある程度の数を確保しないと実験ができないからです。通常の抗ウイルス薬の開発でも、効果が確認されてから治験を経て商用化され、臨床で投与されるまでには、最低1年半程度の期間が必要です。

従って、当分の間は、新型コロナウイルスに直接作用するのではなく、咳や発熱などの症状だけを抑える対症療法が中心になります。加えて、アビガンなどの他のウイルスに効果のある抗ウイルス薬を投与して、少しでも新型コロナウイルスの増殖を抑えることになります。こうして時間を稼ぎ、新型コロナウイルスに直接作用する薬の開発を待つのです。

ですから、戦いは長期戦になります。SARSの時も、最初の感染が発見されてからWHOが封じ込め宣言をするまで8ヵ月かかっています。感染したらすぐに症状が現れるSARSですら、この程度の期間が必要でした。ましてや、感染してもすぐには症状が現れない新型コロナウイルスの封じ込めには、遥かに長い時間がかかると覚悟を決める必要があります。