問題は、その3月XX日の翌日に起こりました。

朝、班ごとに分かれて、その日の業務の確認をしていたときのことです。一通りの業務確認が終わった後、A班長が私にこう言ったのです。

「おい、永嶋。絶対に怒らずに聞けよ。昨日、お前が朝出勤して帰った後、課長が『永嶋は何だ! 朝来て、今日はやることがないとわかったから、年次休暇をとって休むとは何事か! 年次休暇は認めない。あいつは実にけしからん! 永嶋に二度とこんな真似をしないようによく伝えておけ』と言ったんだ」

もちろん、私は仰天して、A班長に言いました。

「2月から、『昨日、年次休暇を取る』とみんなに言って、ずっと段取りをしてきたんですよ。昨日の朝、出勤したのも、機械メーカーが徹夜で検討してくれることになったから、やむなく出たんじゃないですか。班長も、それはよく知っていることではないですか」

しかし、A班長は「だから、怒るなと言ってるだろう」と繰り返すだけでした。なぜか不思議なことに、A班長は、私が何を言っても、また何を聞いても、一切事情を説明しようとはせずに、「だから、怒るなと言ってるだろう」という言葉だけを繰り返すのです。

その日も多忙でしたので、私はまったく釈然としないながらも、すぐに仕事に没頭するしかありませんでした。課長に「実は……」と真実を話しても、事実を確認せずに一方的に私を非難する課長の言動からみて、信用してくれないどころか言いわけをしているとみられるのは間違いないと思い、課長にも何も言いませんでした。

それからは、定期修理の多忙期間に突入してしまい、私は課長に一度も釈明することなく、話は「私が許可なく年次休暇を取って休んだ」ということで終わってしまいました。

たわいない話と言ってしまえば、それまでなのですが、私には次のような疑問が残ったのです。

①A班長は、課長が私を非難したときに「課長、これはこういう事情です」となぜ事実を説明してくれなかったのでしょうか?

②そもそも、2月から、3月XX日に年次休暇を取ると職場の皆に伝えており、もちろんA班長にも直接何度も伝えていたのに、なぜ年次休暇取得が、A班長から課長に伝わっていなかったのでしょうか?

しかし、私は、それからすぐに始まった4月からの定期修理に心身ともに忙殺され、それが終わると今度は10月の定期修理の準備に忙殺されて、事態は結局、課長に釈明するどころか、A班長にも何も確認できないままに終わってしまったのでした。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『心理学で職場の人間関係の罠から逃れる方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。