まず初めにコーチと取り組んだことは、なぜこのような状態を自分に許してきたのか――この答えを紐解くことでした。コーチからの問いかけに答える内に、俊介は自分を縛ってきたある考えに気づきます。

それは、与えることを止めたならば、自分は無価値になるという恐れでした。

仕事は、当然、誰かに何かを与えることで価値をもたらすものであることに間違いはありません。しかし、この考えが行き過ぎると脅迫観念のようになってしまい、自分が傷つこうとも、犠牲になろうとも、無意識に人のために与え続けることに躍起になってしまうのです。

俊介は、どんなに忙しくとも部下の相談にのり、部下がしきる大切なイベントには必ず駆け付けて励まし、常に与え続けることで貢献してきました。

しかし、与えても、与えても、心には不安が残り、エネルギーが枯渇していることに気づくのでした。与えないと無価値だという考えは、小さい時の家庭環境から根付いたものだということに気づきます。

「いい子」であるために、親や兄弟に何かをしてあげることで承認を得てきたのです。

コーチングをする中で、俊介が新たに持ち始めた考え方は、「受け取ることは与えることである」というものでした。受け取ることが苦手だった俊介は、この新しい考えを受け入れるのに初めは抵抗を示したものの、ゆっくりと少しずつ、相手の思いに心を開いて受け取る、ということにチャレンジします。

しばらくすると、驚くことに、俊介は、人の思いを受け取ると、相手に安心や勇気を与えることに気づきます。また、受け取ることで、相手とよりつながりを感じるようになってゆきます。

そして、受け取ることでゆとりができ、感謝をもって相手にメッセージを伝えたり、何かを手渡したりすることができることも実感するようになったのです。

当然、自分が疲れ果てるまで相手のために時間を費やすことは止め、余裕をもつ生活を手にしたのです。受け取ることと与えること。私たちは、知らないうちにこのバランスを崩すことがあります。

その根底に、次のような無意識の信念があります。

与えなければ自分の価値はない

▼自分は受け取るに値しない

▼自分には与えられるものが何もない

▼十分に受け取ってはいけない、受け取ったらすぐに返さなければならない

このツイン・エネルギーは、受け取ることは与えることであるというメッセージを携えています。十分に受け取ることが、結局は相手のためになるということを教えてくれているのです。そしてまた、与えたものが私たちに返ってくるということも伝えています。

ゆとりと感謝をもって人に何かを差し出す時、私たちは、感謝と歓びを受け取ることになるのです。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『ツイン・エネルギー™ 静と動のバランスを整える16の考え方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。