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究極の選択

(選択2)を選んだ場合

点滴静注だけで様子を見ていくというのは、実は非常にハードルの高い選択である。

まず、

⑴在宅介護を行わなければならない。

意識障害と嚥下障害のあるほぼ寝たきりの患者さんに対して、鼻から胃管を入れて長期的な栄養管理を行う介護施設は決して珍しくない。ただ、それらの施設では、基本的に経管栄養を前提で栄養管理を行っていくのであって、感染を起こしたあとに点滴静注のみで栄養管理することに同意する施設は多くない。在宅介護が困難であれば、入所した長期介護施設において、気道感染症の回復後に何度か経管栄養の再開による栄養管理が試みられる。そのことに同意できなければ、在宅介護を選択しなければならない。

⑵自宅の近くに在宅医療に理解のあるかかりつけ医が必要である。

在宅医療を和子さんたちが選択したくても、それをバックアップしてくれる信頼できる“かかりつけ医”がいないことには、彼女たちの希望もかなわない。というのも、在宅で点滴を毎日実施するためには医師の指示が必要だからである。ところが、普段かかっている医師に相談すると、たいていの場合、「そんな方法ではすぐに低栄養になって、体がむくんじゃうし、点滴の針を刺すことさえ難しくなるよ」とか言われて、家族の方針に反対されることが多い。

もしくは、「私にはその管理方法はできません。他のお医者さんを当たってください」と、そのあと診てもらえなくなることもある。往診担当医だって、あまりやったことのないことに、おいそれとは手を付けたくないのである。

もちろん、同意してくれる医師がいないわけではない。だが、根気よく探さなければならないし、見つからなくて困ることを覚悟しないといけないということなのだ。

この章で紹介したケースは、栄養管理法を選択するといったことが、実はその後に起こりうるさまざまな問題の最初の選択にすぎないということを示したものです。

胃瘻の選択というのは、その後、次々と起こってくるであろう、介護上の問題についても引き受ける覚悟を持てるかどうか、そういう側面もあるのです。

ワンポイント解説

地域の医師会に問い合わせるか、介護保険を利用している場合、あるいは利用しようとしている場合は担当のケアマネジャーに相談するとよい(ケアマネジャーについては後頁で再び解説します)。