「女と寝たくなればめちゃくちゃ安いし、若くてきれいな子たちが選り取り見取りじゃないですか。特定の彼女をつくると、ピーちゃんは嫉妬深いから長く付き合っちゃだめなんですよ」

丈はフィリピンの夜の蝶たちをPhilippinaの頭文字を取り、ピーちゃんと呼んでいるようだ。

「さすがですね」

何がさすがか分からないが、正嗣は話の流れから丈をヨイショした。

「プロでも気をつけなきゃ危ないんだ。同じ子を何度呼んでも、ちゃんと一回一回お金でクリアしとかないと。情熱的な子が多いから。ある時、お金なんていらないからずっと一緒に居たいなんて言われるよ」

「そうなったらヤバいっすよね」

「だからそうなる前に察して女から離れるんですよ。その辺の女の心理を読むのも面白いよ」

「あぁ何て罪深い。ジョーさんって、結構女泣かしてるでしょ」

顔や姿からはあまり想像できないが……。

「そうかもね」

「そんなことばっかりやっていると、いつか殺されちゃいますよ」

「でも死ぬならやっぱ腹上死でしょ」

「あぁ、何言ってんだか」

そんなどうでもいい話をしていると、丈が頼んだ料理がどんどんと運ばれてきた。どれも作りたてなので熱々でうまかった。

ご飯を食べている最中、口の中にジャリッとした感覚があった。小石が紛れていたようで、噛んでしまったのだ。これまでも街中のレストランでも何回も経験したことだ。

マニラに来たての頃、皿に盛られたご飯を食べる前はフォークとスプーンで何か入っていないか調べたほうがいいよと幾世から教えられていたが、丈との中だったので忘れていた。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『サンパギータの残り香』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。