【ピアサポーター おおぜきちはるさん】

川崎:その五年の間で、諦めることなく志していたってことですよね。それって簡単には真似できないことですよ!:その苦難を乗り越えて、ピアサポーターになったってことか。ピアサポーターを始めてみて、何か変化はありましたか?

おおぜき:医者の見立てた診断名ではなく「その人」を見るようになりました。その人の細胞のひとつひとつまでが病気ではなく、病気なのは心身の一部ですよね。障害の多い人はニーズの多い人。

ピアサポーターはその人が描く人生のストーリーに役をいただいている感じです。当事者の方の「病気ではない部分」から学ぶことがたくさんあるんです。まさにwin-winです。

川崎:それ本当に大切なことですよね。診断がついていることで、どうしても診断に目を向けられてしまいますもんね。ピアサポーターの活動についてもう少し具体的なものとかを聞いてもいいですか?

おおぜき:活動としては、病気を持つご本人、ご家族に立ちはだかっている問題のお話を傾聴、また当事者グループや一般の医療福祉の教育機関で自分の実体験をお話しさせていただいています。

精神の病気って外から見えづらいじゃないですか、分からないから対応に困ったり偏見につながったりしますよね。実際に病気を持っている私の生の声を聞くことで、私と同じような生きづらさを持っている人たちの「ホントのところ(実状)」を社会の多くの人に少しでも知ってもらいたいんです。

川崎:すごい勢いで活躍されてますね。今後のビジョンとかあったりするんでしょうか?

おおぜき:私は退院から地域で安心して暮らせるための支援をしたいと考えているんです。精神科入院だけで人生を諦める人は多いんですよ。

私は精神科の入院経験が四回あるのですが、入院中に院外の道を歩くだけで「あの人、精神科病院から出てきた」と変な目で見られてる気がするし、たとえ退院しても社会にはもう自分の居場所なんてない気がしてしまいます。

「人は普通の家で普通の暮らしをして希望を味わう権利があり、社会はその権利を実現する責任がある」という言葉を聞いたことがあります。

当事者が自尊心を損ない、社会に背を向けて人生を病院に閉じこめてしまう前に、私が「社会の風」となり、その人が「社会に戻りたい」と望んで退院できるようになったらいいなと思っています。

内科に入院した人は治ったら退院するのに、精神科に入院した人は「地域移行」という。どちらも支援が必要なのにおかしいと思いませんか?:ご自宅を含めた地域で暮らし、自分ができることを地域で活かし、自分の望んだ人生を送っていけるのが幸せだと思いませんか?

これは健常者も精神の病気を持つ人も同じで、「ありがとう」と言い合える関係って大事だと思うんです。

なので、私はまず、病気や障害のあるなしに関係なく気軽に集まってわちゃわちゃと交われる「しゃべり場」を作りたいです。この気兼ねない「わちゃわちゃ」っていうのがいいんですよ。