実践からの学び

ほどなく私の仕事もグループワークが増え、多岐にわたるようになります。複雑な状況を抱えた企業で働くリーダーの方々の支援。多国籍グループの長期にわたるリーダーシップ開発など。この頃から私は、もっと深く、微細に、そして瞬発的にツイン・エネルギーというコンセプトを活用して人の成長を支援してゆく必要性を感じてゆきます。なぜなら、私が出逢った多くの方々は、複雑な問題を抱え、女性性と男性性のどちらかに偏り、苦しまれているように感じたからです。

かつての私のように男性性に偏っている人は、動のエネルギーを使いすぎ、がんばりすぎて体調を壊したり、自分にも周囲にも攻撃的になって孤独感を味わったりしていました。

女性性に偏り静のエネルギーを使いすぎている人は、人の気持ちを受け取りすぎて自分を傷つけていたり、本当は力があるのに思い切って自分を主役にして周囲をリードすることに恐怖をもっていたりしました。

そうした方々に出逢う度に、私はここぞとばかりに、ツイン・エネルギーを念頭においてアプローチしましたが、その難しさから、多くの失敗も体験します。怖がって前に進むのを躊躇している相手に、男性性を喚起しようとやみくもに行動を促して心を閉ざされたりしました。つらい体験をしている人には、女性性の出番だと共感するものの、適切なタイミングでその人の背中を押すことができなかったりしたのです。

ツイン・エネルギーのバランスを整えることがそれぞれの人の助けになることはわかっていましたが、その活用方法に難しさも感じていました。何しろ、お一人ひとりのバランスの具合、変化の速度やタイミング、アプローチの好み、など千差万別だったからです。その人に合うやり方でツイン・エネルギーを自在に使って支援することができたなら、どれほどもっと人の役に立てるだろう。そう痛感していたのです。

私は、さながら研究者にでもなったようなつもりで、女性性と男性性というコンセプトが、人の成長や変容にどう役立つのか、という問いをもち、日々探求していきました。

失敗を繰り返しながらも、私は、お一人ひとりから、ツイン・エネルギーをどう活用したら変容に役立てるのかを学んでゆきます。一口に女性性と男性性といってもいろいろな側面があることもわかってゆきます。

一番大きな学びは、2つのエネルギーは、誰の中にも存在するということです。私の役割は、ご本人がそのリソースを思い出せるようガイドし、その人なりのやり方で2つのバランスを整えるサポートをすることだったと言えます。

ほどなく私は、実践を通して学んできたことを、言語化して整理したいと思うようになります。成長・変容したいと思う方が、自分自身でツイン・エネルギーを活用できるようになれば、どれほど良いかと思ったからです。そうして出来上がったものが、「ツイン・エネルギー16」というコンセプトです。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『ツイン・エネルギー™ 静と動のバランスを整える16の考え方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。