カーボンフットプリントや国境炭素税の意義

脱炭素社会を成立させるには、私たちの生活だけでなく、産業活動における温室効果ガスの削減は必須です。

言い換えれば、私たちが生活するために必要なモノを製造するのにも、できるだけ温室効果ガスを出さずに作られる必要があります。

このような観点から、さまざまな製品や、製品を構成する部品のひとつひとつまで、製造工程において排出された二酸化炭素を定量的に評価する試みが、以前から為されてきました。

このような観点で評価された炭素排出量を「カーボンフットプリント」と呼びます。

カーボンフットプリントが注目される理由は、現代社会のグローバルな生産体制にあると言えるでしょう。

例えば、私たちが使っているスマートフォンは、さまざまな国で部品が作られ、最終的に世界各地から集められた部品をもとに組み立てられ、世界中に出荷されていきます。

この際、ある国が部品を製造するときに排出する二酸化炭素が多く、その他の国は二酸化炭素の排出量を減らす対策を講じていた場合、完成した製品は果たして「脱炭素」であると言えるでしょうか。

温室効果ガスは地球全体の気候に影響を及ぼすため、過大に排出した国や企業だけでなく、排出を抑制している国や企業まで影響を受けることになります。そのような理由から、前述の製品は「脱炭素」であるとは言えないことになります。

ある製品が脱炭素であるためには、あらゆる部品や製造工程に至るまで、いわゆるサプライチェーン全体としての脱炭素対策が為されている必要があるのです。

このような観点から、国際社会では「国境炭素税」の議論が活発化しています。国ごとの二酸化炭素排出量の不均衡を是正するため、二酸化炭素を多く排出している国には、相応の金銭的ペナルティを課すことが、これらの議論の目的であると言えます。

不平等な制度とならないよう、国際社会の合意までにはまだまだ議論が必要です。

しかし、「ものづくり」と言われる製造業を主軸とする日本にとっては、私たちは部品のひとつひとつにまで、二酸化炭素の排出量が紐づけられて評価される社会が到来する可能性を、しっかり認識する必要があるでしょう。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『データドリブン脱炭素経営』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。