指に力が入らず、突然キーボードが打てなくなりました。身体に力が入らないことにも気づきます。何度か深呼吸をしてみますが、良くなるどころか、息苦しい感覚がどんどん増し、もう仕事どころではありません。その後のことはよく覚えていませんが、なんとかタクシーに乗って自宅に辿り着き、床に倒れ込んだことを覚えています。

怖い! 何が起こってしまったんだろう! そう思いながら、なんとかその夜をしのぎました。翌朝、少し落ち着いた私は、上司に連絡し、「肺に穴があいてしまったので病院に行こうと思います。すぐに復帰するので少しお休みをください」と伝えます。その後大学病院に行った私は、医師から驚きの言葉を受け取るのです。

「きれいな肺ですよ。全く問題ありません。ここではなく心療内科で診てもらってください」

レントゲン写真を見ながら、そう医師は私に言い放ったのです。

今から考えると、私はこの出来事に感謝をしています。なぜなら、この日を境に、私の第二の人生が始まるからです。東洋医学に精通していた新たな担当医は、すぐに私の性格を見破りました。「あなたはがんばり屋だからね。仕事は半分に減らしてください。一番大事なことは、いい加減になることです。何事も、適当に、ほどほどにやってみてください」と、そう言ったのです。

いい加減、ほどほど、適当―どれも私にとって違和感のある言葉でしたが、お医者さんの言うことならば仕方がありません。何より、私の身体は本調子ではなかったので、仕事も何もかも、ほどほどにやらざるを得なかったのです。

それから1年ほどかけて、ゆっくりと、これまでの自分のやり方を手放してゆくことになります。正直、先が見えず、これから自分はどうなっていくんだろう、その言葉がいつも心の中でこだまし、とても不安でした。そして、とてつもなく大きな渦の中にいる自分を感じながらも、どうしていいかわからず、ただただ日常をやり過ごすしかなかったのです。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『ツイン・エネルギー™ 静と動のバランスを整える16の考え方』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。