その高校の入学説明会で、俺はまた過去の学校へ行けなかった自分を思い出す。同じクラスのみんなが、自己紹介で中学の楽しかった思い出や、やってたクラブのこと話すのを見て、あー、俺には中学の思い出なんて、なんもない。なんも話すことない、やっぱみんなと違うわ、って思い、愕然とした。急に自信なくなってきた。どないしよう?

案の定、入学前の合宿の日、足が前に進まへん。おかんが付いてきてくれたけど、高校の一個手前の駅で、トイレに行きたくて降りる。集合時間にはもう間に合わへんし、やっぱ行きたくない。無理や。おかんには悪いけど、俺だけ来た電車にさっと飛び乗る。反対方面に行く電車やけど。扉が閉まって、俺は行きたくない高校から遠ざかってく。おかんがびっくりして、電車の窓越しにこっち見てる。

また、やっぱり繰り返しや。中学と何も変わってへんと思った。その後おかんと家で合流し、月一回まだ通ってた相談に乗ってくれるとこに行く。相談員の人は、前の人から変わってて、超若い人になってた。そして、俺に、

「行けなくても、自分を責める必要はない」

と言ってくれる。ちょっとだけ安心した。でも家に帰ったら、おとんが仕事中やったのに帰っててたんやな。おとんは、

「今が一番大事な時やから」

と言って、

「とりあえず合宿場所まで行こう、やっぱ無理やったら帰って来よう」

と、俺を車に乗せて合宿所まで連れて行った。そして、電話を受けた先生たちが車までやってきて、俺を無理やり引っ張ってみんながいる方へ連れていく。ああ、多分抵抗しても無理や。おとんも見てるだけや。しゃあない、行くか、と心を決める。

その日は、途中からみんなに交じって食事。でも寝る部屋は先生が俺のために個室を用意してくれた。次の日からのことはあんまり覚えてないけど、気の合うやつが一人おって、そいつとしゃべってると結構楽しかった。次の日はみんなと同じ部屋でも寝れた。高校はなんとかなるかも、ってちょっとだけ思った。帰る日も、気の合うそいつと一緒に帰った。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『子どもが不登校になったら』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。