今度こそ 有名大学に進学してやろうと 浪人までした

難関大学に入りたいという願望は 人一倍強いのだけど

勉強の方は 相変わらず身が入らず 

偏差値でいうと 四十台後半くらいの人が通う

やっぱり「中の下」くらいの大学にしか行けなかった

大学では

「デキる男」や「モテる男」になりたくて

何かひとつ物事を極めてやろうと一念発起

でも

ギターは 弦を正しく押さえることができずに挫折

ピアノは 両手で弾くことができずに挫折

絵も デッサンが上手く描けず 彩色する段階まで行かずに挫折

英会話も ネイティブの発音が聞き取れず 言いたいことも表現できずに挫折

結局 何か資格を取るわけでもなく

サークルやボランティア活動に 精を出すわけでもなく

漫然と四年間を過ごした

就職では 

高校の教師になりたかった

学園ドラマを見て 生徒から慕われて スーパーマンみたいに活躍する先生に憧れたんだ

でも 無為に大学生活を過ごしていたので当然だが 

たいしたアピールポイントもなく 採用試験に落ちた

現在は

何をしている会社なのか説明できない

肩書きのたいしたことない

同窓会で名刺を渡すのが恥ずかしい

そんな職場に勤めているよ

世間体や親の目を気にして 結婚もしたのだが

本当に恋い焦がれた相手ではなかった

本命だった彼女には 食事も映画もすべて断られたんだ

だから ときめきやドキドキもあんまりなくて

子どもをつくって 親としての責任を果たす覚悟や勇気がない

夢見ていた「笑い声の絶えない 幸せで温かい家庭」からはほど遠い

冷静になって 自分の人生を振り返ってみれば

真に望んだものは 何一つ手に入らなかった

自分の努力が足りなかったのか 出会いに恵まれなかったのか

それとも 本心から望んだ選択じゃなかったのか

判然としない

でも「自分の人生は 全て嘘っぱちだった」と認めてしまうのはシャクだから

べとついた厭世観を 無意識の一番奥へ そっと押し込めながら

「俺の人生 第一希望通りにはならなかったけど きっと意味があるはずさ」

なんて自分の人生をごまかして 

無理矢理 今日という日が楽しいと 思い込もうとしているんだ 

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『愛は人を選ぶ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。