夢解き

この父方の祖母は父に甘いが、私のことも可愛がってくれている。私と父は、あまり認めたくはないが頑固なところが似ていて、時々小さな衝突をするのだが、その度にとりなしてくれるのは母ではなく、祖母なのだ。この大喧嘩の時も祖母は、

「私は父親が短大なら行かせてやると言ってくれたのに、勉強が嫌いだったから断ってしまったの。でもだいぶ後になってから後悔したわ。なほ子ちゃんの気持ちはよく分かるから、私が何とかしてあげる」

そう言って、父を説得し始めた。気持ちは有難いが、正直なところ私は諦めかけていた。「何とかしてあげる」と言っても、さすがにこればっかりはどうしようもないのでは……と思っていた。母は父の言うことに反対したことが無いし、祖母一人で頑張ってもどうしようもないだろう。

結局は私が短大に行くことを承知して仲直り、ということになるのだろうと半ば覚悟していた。ところが祖母も頑固な点では私達に負けていなかった。一ヶ月という時間をかけて、少しずつ父を説得した。

最終的には、「S大なら元女子大で、女生徒が多いし、家から通えますよ。取引相手の○○さんのお嬢さんもそこのご出身だそうですけど、良縁があったのでしょう?」と言って、これが決定打になった。おかげでS大しか選択肢が無くなってしまったが、私は祖母に感謝した。

そんな経緯があったので、私がW大の学生と付き合っていると知ったら、どんな反応をするだろうかと少々心配であった。しかし父は、海人の学部と名前を聞いた途端、まず安堵の表情を浮かべた。それを見た私は一瞬、違和感を覚えたが、心配していたような反応ではなかったので、とりあえず安心した。父は、「今度、家に連れて来なさい」とだけ言った。

そして今日、その男を間近で見て将来有望であると見た父には、研修医を終えてから結婚、であれば私が四年制大学に通ったことも「丁度良かった」となったわけである。私は素っ気なく「そうね」とだけ答えた。