この後、急いでスタイリストの菜穂に留守番で来てもらい、近くの整形外科へと美容院を抜け出していった。病院に着くとすぐに診察室に案内されⅩ線検査を受けた。

「手は骨折しています」

医者の一言で全身の血がひいていった。

「内側にあるこの細い骨なんですけど痛むでしょう? ここです」

そういいながら親指の付け根辺りをさした。さっきシャンプーをしていた時に違和感がでた箇所だ。

「お仕事で手は使いますか? パソコンとか?」

「美容師なんでいつも使います」

「そうですか」

画像にもう一度向き直ると医者は少し沈黙した。手術なんて言わないでくれ、頼む。

「手を動かせますが、折れていますからコルセットで固定していきましょう。お仕事してもいいですが、仕事以外の時はコルセットをつけて手を休ませてください。患部に負担がかかると治りが悪いので、しっかり通院してくださいよ」

仕事ができると聞いてほっとした。ドクターストップなどかかったら困ってしまう。

「脚は打撲ですね。内出血しているだけなので、数日すれば治りますよ。心配なのは腰ですね……。骨は問題ありませんが、ムチ打ちなので治るのに時間がかかるでしょう。リハビリしていきましょう」

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『絆の海』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。