景色

自分を片手で抱えながら

もう一方の手だけで生活しているので

不便で仕方がない

動くたびに

破片が落ちる

それを拾おうとすると

大惨事が起きるので

捨てていくしかない

両手で暮らせさえすれば

そう思い思いしながら

抱えた片手を離すことができない

ホロホロとこぼれていくものを

振り返り振り返り

歩いていく

ただ行けるところまで行きたい

最後に見る景色はどんなだろう

どこかに水があればいいのだが

東南アジアの坂道で

夢の中で

私は東南アジアのほこりっぽい坂道を登っていた

登り切ったところで

バッタリ女友達に会った

見知らぬ土地で友達に会えたのが嬉しくて

私は彼女に歩み寄った

しかし彼女は浮かない顔をしてうつむいている

聞くと彼女は密輸に手を出して

困ったことになっているらしい

「そんなにアカンの?」

私は彼女の顔を覗き込んで聞いた

「アカン」

彼女は下を向いたまま言った

そして私達は並んで歩き出し

やがて大きな川のほとりに出た

二人はしばらく黙って川の流れを眺めていた

すると川上から女の人の死体が

どんぶらこどんぶらこと流れてきた

女友達は驚きもせずにこう言った

「この川上に阿藤園の茶畑があって、そこの仕事がきつくて

毎日茶摘み娘が身投げするんや」

見るとなるほど死体は紺がすりに赤いたすきをかけている

そしてあとからあとから

どんぶらこどんぶらこと流れてくる

そのあといきなり場面は変わって

私達はカイコ棚のような寝床にいる

どうやら私達二人は阿藤園で働き出したようだ

ということはつまり私も日本を食い詰めて

ここまで逃げてきたということなのだろう

さてそのあと私達がどうなったかは

夢が覚めてしまったのでわからない