サービス化が実現する事業構造の変革

財団法人地球環境産業技術研究機構(通称、RITE)理事長・研究所長の山地憲治氏によると、

「IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのデジタル技術によって実現する超スマート社会(Society5.0)では、革命的な省エネルギーが実現する可能性がある。超スマート社会ではサイバー空間とフィジカル空間が統合され、必要なモノ・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供できる。エネルギーサービスの提供に当てはめれば、全く無駄のない究極の省エネルギーが実現する。これは情報によるエネルギーの代替である。」

と、ここでも単なるものづくりへの警鐘を鳴らしておられます。

また、山地氏はこの究極の省エネルギー現象の身近な成功事例としてスマートフォンを挙げていらっしゃいます。

「スマホの基本機能は電話だが、今では様々なアプリケーションプログラムによって、ネット端末、財布、テレビ、カメラ、時計、計算機、照明など様々な機能を持つ。それぞれ個別の製品を所有する場合と比較すると、エネルギー消費量の大幅削減のほか、物質量も大きく減らしていることが実感できる(3)。」

つまり、今後デジタル化のさらなる進化によって、単機能のモノを大量に製造してそれを販売し儲けていくというビジネスモデルは成立しなくなるという示唆であり、脱炭素化という社会的な要請からも産業構造のサービス化への傾斜・転換はますます促進されるということにつながっていくものです。

日本企業がその労働生産性を高めることにより、グローバル環境での競争力をつけるためには、まずは現場レベルにおける地道なデジタル化を推進し、自らを筋肉質にすることから始め、同時に事業自体の構造を単なる製造から、そのものづくりの強みを活かしつつサービスビジネスを付加していくか、またはサービスビジネスへ転換していくことです。

つまり、これからの日本企業には、デジタル技術を縦横に活用しつつ事業構造自体を大胆に脱炭素化に向けて変革していくこと、そして、企業自体の収益力と新ビジネスを立ち上げるイノベーション力を発揮していくことが期待されています。

そのためには、デジタル化を推進するための積極的な投資とともに、自社の製造商品やサービスを活用して、「ものの効用」や「顧客の体験」を重視したサービスビジネスへと昇華することができるビジネス人材の育成、または獲得が今後の重要な経営課題となってくるでしょう。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『データドリブン脱炭素経営』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。