第1章 心構え

明日でいいことは今日やらない

これは意外に思われるかもしれない。多くの成功哲学本などで、思い立ったが吉日、今日できることを明日に延ばすな、という類の名言が取り上げられているのをあなたも見たことがあるだろう。だけど、こういった言葉を表面的に捉えてしまうと、僕のような普通の人間は自分を果てしなく追い込むことに成りかねないのだ。

ショートスリーパー型の人間で、相当情熱のあるスーパーマンなら確かにこの考え方で成功しているのだろうけど、そうでない人にとってはますますその日の業務量が増え、必要以上の責任を感じて残業時間が増える一方になってしまう。

たまに定時で帰ろうとすると、「今日やることは全部終わったのか?」と聞いてくる上司もいると思う。そういう上司に限って、終わったと説明しても、「あれが終わってないじゃないか、これはここまでやらないと……」などと言われることもあるだろう。その価値観というか、仕事に対する考え方の違いで現場が嫌になった人もいるかもしれない。

そんな人に声を大にして言いたい、スマートゼネコンマンは、明日でいいことは明日やるんだって!

そもそも、建設現場は最初から工期が決まっている。天災や地中障害など、相当な理由がない限りその工期が遅れること(=残業)は許されない。最初の契約の時点で、工期が遅れたら賠償金を払うことを決められているし、何より会社としての信頼を失ってしまうからだ。

言い換えると、ある建物を完成させるために、最初に工期という「時間」を約束して、それを守ることを前提に商品を完成させるというプロセスなのだ。約束をやぶる人が信頼されないように、建設業においては信頼を得るために「時間を守る」ということはとても大切だ。

現場監督を始め、サラリーマンの場合は、労働基準法や会社の就業規則に定められているように、1日の労働時間が会社ごとに決まっているけど、これも本来は時間を守ることが重要なはずだ。むしろ、求められている成果を達成できるのであれば早く帰ってもいいくらいではないかと僕は考えている。

残業代ではなく、早退代にした方が生産性も上がるのではと本気で考えたこともある。

僕は経験したことはないけど、ゼネコン時代の噂で、ある支店にとても優秀な所長がいて、予定工期よりも早く竣工させてしまうと聞いた。発注者企業からすれば、予定よりも多く準備期間をとることができるし、ゼネコン側としても経費がかからない分当初予算より利益が出る。まさに三方よしの現場運営だ。その所長は最年少で人事考課の最高評価を受けたそうだ。

だから、労働者としても、ちゃんと働く時間を守ることを前提にした上で、求められる業務成果を出すことに目標をフォーカスした方がいい。残業を当たり前と思ってしまっている人にとっては、定時で帰ることに最初は抵抗があると思う。これをやっておかないと明日が怖い、というような強迫観念にかられることもあるかもしれない。

だけど、一度割り切ってやってみると、今日やっても明日やっても大差ないような仕事は結構あるものだ。とりあえず目の前の仕事がたまっていても、「時間を守る」という大義名分のもと、勇気を出して定時で帰ってしまえばいい。

そうやっていくと、確かに、昨日やっておかないといけなかったようなことも時には出てくると思う。そこはトラブル大歓迎の精神があれば乗り越えられるし、それは本当にやっておかないといけなかったという「正解」に気づくことができたと思えば、一歩前進だ。

積み重ねていけば、周りに流されない自分なりの軸で判断できるようになってくる。大事なのは、こういったことを常に自分に問い、今やる必要があるのか、やるとしたら何のためにやるのかといったことを考え続けることだ。そういう思考を止めない姿勢が、やがてムダのないスマートゼネコンマンを作り上げる。

※本記事は、2020年5月刊行の書籍『スマートゼネコンマン~残業なしで成果を出す次世代現場監督~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。