除草のプロフェッショナルである農家の人たちは「草刈り」、「草取り」、「草毟(むし)り」という言葉を除草の方法や場所などによって使い分けています。

「草刈り」は男性の作業でエンジン付きの刈り払い機や鎌で草を刈ること、「草取り」は男女の作業で水田や畑で雑草を手で引き抜くこと、「草毟り」は女性の作業で屋敷周りや墓地などで手で草をむしり取ることを意味しています。

かつては「草取り」は人力による手取り除草でしたが、現在は除草剤で草を枯らす「除草」という言葉に置き換えられているようです。

「草毟り」の「毟」は手で草を引きちぎる動作を示す国字であることから、「草毟り」は中国にはもともと無かった習慣ではないかと考えられます。

同僚の中国人の教員に尋ねたところ、場所にもよるかも知れませんが「草毟り」は中国では一般的ではないとのことでした。また、欧米でも、しゃがんで草を毟る習慣はありません。

「草毟り」が日本固有のものなのかどうかは今後の調査に待たなければなりませんが、江戸時代や平安時代はもちろんのこと、縄文人も竪穴式住居の周りで草毟をしていた可能性はあります。

昭和の中頃まで、炊飯、洗濯、掃除などの家事全般はすべて手仕事でしたが、今は炊飯ジャー、電気洗濯機、掃除ロボットに取って代わりました。

そうすると数千年の昔から変わっていない唯一の家事が「草毟り」ということになります。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『 雑草害~誰も気づいていない身近な雑草問題~』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。