茨城県では、無介助分娩が行われた地域で実態調査が行われています。地域の特徴は、交通の不便な農山部です。

「出産の立会い者は家族が最も多く、親、祖母、姉で、その他、助産師の資格は持たないが、かなりの経験を持ち半ば職業化していてウデもよいという評判の人(取り上げ婆)や、保健師が妊婦に頼まれ介助した」

ことが報告されています。

このことから、茨城県でも全国同様に農山部では家族や無資格産婆(取り上げ婆)が出産に立会っていたことがわかります。

また立会い者がなくひとりで出産した事例も報告されています。

無介助分娩の理由は、「交通が不便、経済的理由、今までの風習、(資格を持つ)助産婦と思っていた」ことが挙げられています。

無介助分娩の理由に、今までの風習も挙げられていることから、1970年代の初め頃でも、地域によって出産は特に医療者の立会いが必要とされるものではなく、生活の中で文化的に継承され営まれてきた行為であったことがわかります。

なお、この調査では、死産の事例があったものの無介助分娩が原因とは論じられていませんでした。また、無介助分娩の危険性については、岩手県と全国の、1955年と1960年の周産期死亡率と分娩立ち会い者間の相関関係の分析が行われています。

そして、分析の結果両者に関連はなく、

「医師が立会うことによって直ちに新生児死亡が減少するものでもなく、反対に医師以外の者が分娩に立会うことによって直ちに新生児死亡が増加するものでもないことを示している」

と報告されています。

このように、この時期までの調査で、無介助分娩が危険だという証拠は見当たりませんでした。

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『私のお産 いのちのままに産む・生まれる』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。